緑に映える漆黒の平屋
風景を取り込む傾斜地の魅力
“日常”と“非日常”が共存する緑に映える漆喰の平屋
平屋に住む。隣に古墳がある、建築条件の厳しい地域に建つ高基礎の平屋。和瓦と銅板の屋根に、漆喰と杉や桧を組み合わせた風景に馴染む住まいは、設計の仕事に携わっている奥様の「二人の家を建てるなら、こんな家を建てたい」という長年温めていた想いが、ご主人の抱く理想と合わさってカタチになったものだ。「大工さんにもいろいろと無理をお願いしました」との言葉どおり、プロならではのこだわりは細部にまで行き届いている。例えば、仕上げ材のつなぎ目に施す「見切り材」を使用せず、ぎりぎりまで漆喰やタイル仕上げに。また、幅木も極力細くし、よりシンプルで洗練されたデザイン性を生み出すなど、さすがの一言につきる。間取りのこだわりは、それぞれの空間が分断されることなく、ゆるやかに連続していること。玄関と土間、そしてLDK、キッチンと連続する間取りは、横とのつながりをどちらの空間にも取り込みより広さを実感、動線にも無駄がない。あちこちにある本棚に好きな本を置き、窓から見える景色を愛で、庭で花や野菜を育て、冬は薪ストーブの火を囲む。誰もが憧れる「ゆとりと余白のある暮らし」がここにはある。
■写真:「風致地区の傾斜地に、高基礎の平屋を建てる」という制限の多い建築だったY様邸。道路から建物までのアプローチも楽しみのひとつとなるよう計画されている。下から見上げると垂木現しの軒裏が印象的。板戸と漆喰のシンプルな外観は、周囲の風景に馴染み、何とも言えず美しい。
ケヤキの木のカウンターがあるテレワークスペース。ここからの眺望は素晴らしく、特に夕焼けが見事だそう。
山小屋風のプライベートゾーン。ご夫婦それぞれのクローゼットは使い勝手がよく、収納力も十分。
Ⅱ型キッチンは作業スペースが広く、収納力たっぷり。
ロフトの奥には、ごろ寝できる畳スペースも。
外観正面。
玄関土間にある薪ストーブはドイツ製のアイアンドッグ。バックのタイルは奥様が選んだお気に入り。
本好きのご夫婦。はしごを使って好きな本を探すのも楽しい。
床のチーク材は大工さんが1枚1枚張ったもの。勾配天井の直線に施した間接照明が美しい。