住み継ぐ築150年の家
本家や離れ、馬小屋、蔵のある築150年以上になる昔ながらの古民家に少しずつ手を加えるリノベーションを手掛けている『ヨシダデザイン工房』。「お施主様とは、20 年前にトイレのリフォームを行って以来のお付き合い。仕事ぶりを信頼して、毎年何かしらの工事を依頼してくださっています」。2年前に子ども部屋を作った際、断熱性能が格段にアップしたことから、昨年は板間と土間の床を上げてリビングにする工事を行った。「あまり和風っぽくしたくない」というご要望から、床は節の入ったナラ材を使用。天井裏に敷いた土の落下を防止するため、既存の天井の下に奈良県産の杉板を張っている。ひねった丸太梁の型を取り、隙間なく仕上げるのは、大工の技術力が求められる大変な作業だったという。昔の趣を残しつつ、家族構成や生活スタイルに合わせた古民家再生という考え方。「残せるものは残しながら、何年にも渡って少しずつ手を加え、今風の要素も取り入れて大切に住まう」という、お施主様の思いがあればこそ、こういった住まいを後世に残していくことができる。
ニッチや収納を設置した洗面スペース。床は、ヴィンテージ風のタイル柄クッションフロアを採用。
築15 0 年の古民家に毎年少しずつ手を加え、大切に住み継ぎつつ現代に暮らすという選択。周囲の雰囲気に馴染む建具や照明を選び和に寄りすぎず、スタイリッシュさをプラス。古民家リノベーションの理想形がここにある。リビングは断熱性能がかなり向上したことから、冬場も快適に過ごせると好評。
お子さんが「小学校の廊下みたい」とお気に入りの4 枚引き戸。空間を広く見せるために上部を透明のガラス、プライベートを確保するために下部をかすみガラスにしました。欄間ガラスは、もともとそこにあったかのように雰囲気を合わせて、手作りしています。
今からでは作れないような建具は残し、雰囲気を壊さないように新たな建具を組み合わせています。
以前の佇まいを残しつつ、今風の雰囲気をいいバランスで
融合し、使い勝手の良さも実現しました。本家の玄関にはス
テップを設け、利便性を向上。空間に馴染むように、手すり
とは分からないように手すりを設置するなど、細やかな工夫
を施しています。