60代からの家づくりの最適解とは?後悔しない家づくりの秘訣と間取りの工夫
目次
「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」を取り入れた、安心・快適な暮らし
60代からの家づくりを考える方が増えています。自然豊かな地方への移住、子世帯との同居を見据えた二世帯住宅、退職金を活用した“最後の家”づくりなど、目的は人それぞれ。たとえば、子どもの独立を機に、60代のご夫婦が2階建てから平屋へ建て替えるケースも見られます。子育てを終えたこの時期は、これからの暮らしを安心・快適に過ごすために、新築やリフォームを検討するよいタイミングです。同時に、年齢とともに現れる身体の変化に備え、「使いやすさ」と「安心」を両立した住まいづくりが求められます。
60代で新築を選ぶ方は、コンパクトな間取りや平屋住宅など、安全性と暮らしやすさを重視する傾向にあります。ただし、住宅ローンの条件が厳しくなることや、将来の介護に備えた設計として、バリアフリーやユニバーサルデザインを取り入れるなど、先を見据えた工夫が欠かせません。
今回は、「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の違いを踏まえながら、60代からの家づくりに役立つ間取りや設計のポイントを考察していきます。
・「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」ってどう違うの?
「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」は、どちらも暮らしやすさを追求する考え方ですが、実は似て非なるものです。それぞれの違いを正しく理解することで、60代からの住まいづくりに最適な設計が見えてきます。
・バリアフリーとは、困っている人のために“障壁”を取り除く
高齢者や障がい者の生活に支障が出ないよう配慮して、段差や狭さ、使いにくさといった物理的な負担を減らすことを目的とした考え方。
(例)玄関のスロープ設置、浴室の段差解消、トイレへの手すり設置など。
・ユニバーサルデザインとは、すべての人に“やさしい空間”をつくる
年齢・性別・国籍・身体の状態に関係なく、「誰にとっても使いやすい」ことを目指す設計思想。
(例)レバー式のドアノブ、音声案内つきのエレベーター、操作しやすい自動水栓など。
どちらも欠かせない考え方であり、60代からの家づくりではその両立が理想的です。
60代からの家づくりにおける意識したい8つのポイント
介助・介護に配慮した暮らしやすい間取り
設計の工夫一つで、毎日の暮らしやすさが大きく変わります。安心・快適な住まいをつくるには、介助や介護が必要になる可能性も踏まえた設計がマストです。以下のポイントを意識することで、家族全員が、暮らしやすく、長く安心して住める空間が整います。
①廊下は広めに確保
・理想は幅120cm以上。最低でも90cmを確保。
・車椅子や歩行器を利用することを想定して、余裕のある設計を。
②段差を解消
・転倒リスクを減らすため、玄関・浴室・トイレなどはフラットな設計に。
・家具の配置は通りやすさを考慮し、すっきりとした空間をキープしましょう。
③トイレ・浴室に介助スペースを
・トイレは1.2m×1.5m以上の広さが理想。(介助者が同時に入れる広さと、車椅子の回転スペースを確保するため)
・手すりの設置や、便座の高さ調整(約40〜45cm)も大切。
・浴室はまたぎやすい浴槽、滑り止め加工、手すり設置などで安全性を確保。
④キッチンの工夫
・立っても座っても作業しやすい高さのカウンター。
・少ない力でスムーズに開閉できる引き出しや収納、効率の良い動線で体への負担を軽減。
・家族とのコミュニケーションを取りやすい対面式のキッチン。
⑤収納は“取りやすい高さ”に
・無理な動作を避けるため、手が届きやすい腰〜目線の高さに収納をまとめて、取り出しやすさを重視。
・可動棚なら、暮らしの変化にもフィットしやすく便利です。
⑥ 生活動線のシンプル化
・移動が楽になるよう、寝室・水まわり・リビングを近くにまとめる。
⑦ドアは引き戸にする
・場所を取らずに開閉できるため、介助の際も邪魔になりません。
⑧明るく均一な照明で、影を減らす工夫が大切
・部屋全体が明るい照明で、視認性と安全性を高めます。
新築?それともリフォーム?選び方のポイント
新築では、「退職金を活用した最後の家づくり」として、段差のないフラットな間取りや平屋、二世帯住宅など、選ばれることが多くなっています。一方でリフォームは、今の住まいを生かしながら段差をなくしたり手すりを設置したりと、安全性を高めるバリアフリー化が大きな魅力です。
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・新築の場合
新築は最初から自由に設計できるため、バリアフリーやユニバーサルデザインを存分に取り入れられ、将来を見据えた安心の住まいづくりが可能です。
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・リフォームの場合
既存の構造を生かしつつ、段差解消や手すりの設置、引き戸への変更など、必要な部分から順に改善していくのがポイントです。予算に応じて優先順位を決め、無理なく進めましょう。
まとめ:「今の快適さ」と「将来の安心」を両立する家
60代からの家づくりは、今の暮らしを大事にしながら、将来の安心にも備えておくことが非常に重要です。「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」を取り入れることで、誰もが快適に、そして安心して長く暮らせる住まいが実現します。
間取りの工夫次第で、暮らしの快適性は飛躍的に向上します。
将来への備えとして、今の暮らしをより快適にする住まいづくりを考えてみましょう。
人生の新たなステージに向けた「60代からの家づくり」が、
これからの暮らしに明かりを灯し、心豊かな日々をもたらしますように。
ライター 内藤美由紀