歴史ある趣は生かしつつ、住まい手の快適さをプラスした「インナーガレージの町屋」
こちらは奥行きの深い敷地に建つ、築80年という〝町家造り〟の住まい。『マイ工務店』は今回、その建物のうち道路に面した部分の再生を手掛けた。この改修計画の一番の目的は、駐車場をつくること。敷地の奥にはご両親が普段使っている空間と、この実家を出たK様が仕事をしにやってくる工房があるという。
もともとは、通り土間と和室二間が置かれた間取りだったが、今回の改修では敷地奥へと続く通り土間を残し、和室の一間を駐車場に。建物を減築せずに〝インナーガレージ〟としたのは、歴史を重ねた建物の趣を住まいの個性として生かすためでもある。また、残した通り土間はタイルを敷くなどして装いを美しく整え直し、そこに以前からあった「おくどさん」も色を塗り直してインテリアに活用。さらに土間の吹き抜け上部には格子の建具を用い、暗さが気になっていた空間に明るさと一層の開放感を創出した。残した1階の和室も、畳から板の間に変更。その床材には無垢の桧を使い、窓も二重に設置して快適さや気密・断熱性を向上させている。2階は主に、壁と床を改修。現しになった構造材を、味わい深く生かした空間だ。駐車場に加え、それを含む建物を再生した今回のリノベーションには、同社ならではの提案力・施工力がしっかりと発揮されている。
■物件詳細:80年(一戸建て)
■リフォーム面積:99.17㎡( 30.00坪)
板の間に変更した和室には丸窓も新設し、空間の印象にモダンさを演出。
“町家らしさ”をしっかりと残すため、駐車場の入り口には格子戸を使用。
2階の納戸は構造材を現しとし、空間を広く使えるようにした。濃い茶色になった柱・梁からも、この住まいの歴史を感じられる。
コンクリートで仕上げた部分が駐車場。通り土間はタイル敷きに。
和室手前のホールにも、十分な明るさを確保。
土間の上部は吹き抜け。
2階の納戸と土間上の吹き抜けを格子戸でつなげることにより、双方の空間に自然光が届くよう計画。さらに、天井が低い2階にも程よい開放感が生まれた。
こちらは、玄関扉を開けた先の空間。高い位置にある窓と漆喰を塗った白い壁の効果で、リノベーション前とは比べものにならないほど明るくなっている。
「おくどさん」をはじめ、もともとあった調度品も今回のリノベーションできれいに再生し、住まいを彩るインテリアとして生かしている。
デザインに格子を取り入れることで、もともとの“町家らしさ”がしっかりと残る外観に。
通り土間に設置されていた「おくどさん」は色を塗り直し、インテリアとして活用。
道路に面して置かれていたこちらの和室をなくし、新たに駐車場をつくった。