奈良で快適な暮らしを実現する「断熱の必要性」と「断熱等性能等級」とは
2025/10/30
目次

家づくりを考え始めると、「断熱等級」や「断熱性能・UA値」という言葉をよく目にします。そもそも、断熱とは何なのか。断熱の必要性とは?雪国ではない奈良でも断熱って必要??といった疑問を解決していきましょう!
断熱ってなに?どうすれば良いの?

断熱とは、家の中と外の「温度差を少なくすること」です。熱は、温かいところから冷たいところへ移動する性質があります。そのため断熱が不十分だと、夏は冷房をつけても外からあたたかい熱が入り、冬は暖房をつけても熱がすぐに外へ逃げていきます。家の中で心地よく過ごせないことや、光熱費がかさむだけでなく、家の中の温度差によってヒートショックが起きるといった健康リスクも高まります。
熱の移動を少なくするためには、ポイントが次の4つあります。
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→断熱材の活用:壁や天井、床下に断熱材を入れる。
冬は壁際や足元が寒い、夏の2階はとにかく暑いといった状況を防ぐためには、断熱材が必要不可欠です。
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→窓ガラス+サッシの性能:複層ガラスやLow-Eガラス、樹脂サッシを採用する。
室内の熱の約6〜7割は窓から移動します。以前の家づくりで主流だったアルミサッシは、熱伝導率が非常に高く、部屋の温度に影響を与えてしまいます。窓ガラスの性能を上げ、サッシを樹脂製や木製などに変えることで、熱移動がしにくくなります。
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→庇・軒の活用:深い軒や庇を設ける。
屋根の端で外壁から外に出ている部分を「軒・のき」。大きな屋根とは別に、窓の上などに独立して壁についている屋根を「庇・ひさし」と呼びます。深い=長いことで、太陽の強い日差しや雨が室内に入るのを遮ってくれます。
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→日射を考慮した設計:日当たりや窓の数・位置などを工夫する。
- 夏の強い日差しは遮り、冬のあたたかい日差しを取り込むといった、季節ごとに異なる日射を考慮した設計・窓の大きさや数・間取りを工夫することで、過ごしやすさが大きく変わります。
なぜ断熱が必要なのか、そのメリットとは。

奈良市は、夏の最高気温が35〜38℃の猛暑、冬は平均が5〜7℃で、朝晩は氷点下になることもたびたびあります。家の断熱性能を高めることで、さまざまなメリットがあります。
メリット1、一年中快適な室内
夏は室内への熱の侵入を防ぎ、冬は暖かさを保てる。外気温に左右されにくく、トイレや脱衣室などを含めた家中の温度差が少ない。
メリット2、光熱費が安くなる
すぐに冷暖房が効き、熱の移動が少ないため、冷暖房効率が上がり、消費エネルギーを節約できる。
メリット3、健康的に暮らせる
室内の温度差によるヒートショックを防げる。窓や壁の結露によるカビを防止し、アレルギー対策になる。
メリット4、家が長持ちする
壁内結露による構造材の腐食や劣化が少ない。
メリット5、売買の利点になる
一定性能以上の住宅を建てる場合は補助金対象だったり、ローン優遇があったりする場合もあります。そして今後もし家を売る際、断熱性能が高ければ家の価値のひとつになるはずです。
断熱等性能等級とは

「家のあたたかさ・涼しさをどの程度キープできるか」を数値化して区分したのが、断熱等性能等級(だんねつとうせいのうとうきゅう)です。「住宅性能表示制度」の評価項目のひとつで、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき定められた「日本住宅性能表示基準」に沿って、第三者機関(近畿地方整備局長の登録を受けた住宅性能評価機関)が評価を行います。
現在の最高等級は「7」、2025年4月からはすべての新築住宅で等級4以上が義務化となっています。等級が大きいほど性能が高く、少ないエネルギーで快適に暮らせて、健康面の安心が高まります。快適さと省エネを両立した家をこれから建てるなら、2030年には最低等級になる等級5以上の断熱性能を目指すことがおすすめです。
断熱等性能等級はどのように決まるのか

住宅内の温熱環境が変化する原因は、「室内から外へ」「外から室内へ」といった2つの熱移動が考えられます。
断熱等性能等級は、その2つの外皮性能(外皮熱性能)基準値で決まります。
- 室内からの熱の逃げやすさ=外皮平均熱貫流率(UA値・ユーエーち)
- 室内への熱の入りやすさ=冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値・イータエーシーち)
どちらも数値が小さいほど、熱移動が少ないことを表します。
よって、断熱等性能等級が高いほど、それぞれの小さな数値が求められます。
奈良県で求められる断熱のレベル
日本は縦に細長く、地域により気候が大きく異なります。そのため、断熱等性能等級が同じ等級でも、建築する地域ごとに求められる外皮性能(UA値とηAC値)の基準値が変わります。
地域区分は、日本の国全体が気候条件で1〜8地域に分けられており、一番寒い北海道は「1」や「2」。温暖な沖縄は「8」。南北に長い奈良県は、北部は比較的温暖、南部は寒さが厳しいため、4つの区分に分かれます。
【地域区分 奈良県】
| 地域区分 | 市町村名 |
| 3 | 野迫川村 |
| 4 | 奈良市(旧都祁村に限る)、五條市(旧大塔村に限る)、曽爾村、御杖村、黒滝村、天川村、川上村 |
| 5 | 生駒市、宇陀市、山添村、平群町、吉野町、大淀町、下市町、十津川村、下北山村、上北山村、東吉野村 |
| 6 | 奈良市(旧都祁村を除く)、大和高田市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、五條市(旧大塔村を除く)、御所市、香芝市、葛城市、三郷町、斑鳩町、安堵町、川西町、三宅町、田原本町、高取町、明日香村、上牧町、王寺町、広陵町、河合町 |
※国土交通省告示第二百六十五号「地域区分新旧表」令和2年7月時点 より抜粋
【断熱等性能等級の基準値 地域区分3~6】
| 等級 | 地域区分 | ||||
| 3 | 4 | 5 | 6 | ||
| 等級7 | UA | 0.20 | 0.23 | 0.26 | 0.26 |
| ηAC | 3.0 | 2.8 | |||
| 等級6 | UA | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 |
| ηAC | 3.0 | 2.8 | |||
| 等級5 | UA | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 0.6 |
| ηAC | 3.0 | 2.8 | |||
| 等級4 | UA | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 |
| ηAC | 3.0 | 2.8 | |||
国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に係る上位等級の創設」より抜粋
※ηAC値は、地域区分5~8の比較的温かい地域のみ設定されている。
例えば、【地域区分 6地域】大和郡山市の場合、UA値は次の数値が基準です。
- 等級7:0.26 W / ㎡・K以下
- 等級6:0.46 W / ㎡・K以下
- 等級5:0.60 W / ㎡・K以下
- 等級4:0.87 W / ㎡・K以下
つまり、UA値が低い=魔法瓶のように快適な家ということです。
まとめ

現在の家づくりは、高断熱住宅が特別な家ではなく「当たり前」。
2022年の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」改正より前は、断熱等性能等級4が最高等級でしたが、等級5・6・7が導入されました。2025年4月からはすべての新築住宅で等級4以上が義務化されています。そして断熱性能の重要性はさらに高まり、2030年には等級5が最低等級になる予定です。
熱エネルギーは目に見えませんが、快適さ・健康・家計・環境すべてに影響します。暖かく、涼しく、心地よく長く暮らすために、断熱性能が高い家づくりは重要です。