お住まいの市町村で新たな補助金があるかも!
リフォームにおける「ひと部屋断熱」の取組みを、
奈良の企業にインタビュー!
リフォームをお考えのみなさんの中には、「スマートウェルネス」という言葉を聞いた
ことがある方はいらっしゃるでしょうか。
スマートウェルネスとは高齢者、障がい者、子育て世帯等の多様な世帯が安心・健康に暮らすことができる住環境のことを意味します。
住宅業界では、健康的で持続可能な住まいに向けた「スマートウェルネス住宅」の普及が叫ばれています。
「スマートウェルネス住宅」とは、エネルギー効率の良い住宅(=断熱・気密性能と省エネ効果が高い)と心身共に健康に暮らせる住宅とを組み合わせた、人と環境に優しい住宅のこと。
今回は、奈良県において、「スマートウェルネス住宅」の第一人者でもある
株式会社スペースマインの矢島一氏に「スマートウェルネス住宅」についてお伺いしました。
株式会社 スペースマイン
代表取締役 矢島一氏
大和郡山市で「化学物質や断熱性能と住まいの関
係」に解決策を提案する「健康住宅」にいち早く
取組み、近年は一般社団法人日本住宅リフォー
ム産業協会【JERCO:ジェルコ】の理事として、
近畿支部長や事業開発委員長を歴任する。
外部の気温の変化に左右されない快適な室温の居住空間は、
健康寿命に大きく貢献!
―編集部)矢島さん率いる株式会社スペースマインは、「健康への配慮」や「健康格差」を解消すべく「スマートウェルネス住宅」に取組む中で、「断熱」を中心に考えていると伺いましたが?
特にリフォームの現場においては、「快適性の向上」に「断熱」は欠かせません。動線や設備が改善されて喜ばれるのはもちろんですが、「暑さ・寒さ」のストレスから解放されたことにはっきりと驚きを持たれることがほとんどです。
外部の気温の変化に左右されず常に快適な室温の居住空間は、身体への負担を軽くし健康寿命に大きく貢献するという報告もされています。これは、医療・建築の有識者などたくさんの専門家や住人の協力を得た実験を繰り返すことで証明されています。また、適切な断熱が施された住まいは、省エネ住宅やスマートウェルネス住宅として評価されています。
―編集部)大型リフォーム、いわゆるリノベーションをする際は、まず、家全体の「断熱」を考えることが重要ということですね?
はい。しかし、家全体を「断熱」するにはたくさんの費用がかかります。また、リフォームの現場では、家全体のリフォームの他、「一階部分だけ」や「二階部分だけ」をリフォームしたいというニーズも多くあります。
そこで、部分リフォームの中で最低でも、一日のうち大半を過ごすLDKや寝室などの空間や、暑さ・寒さのストレスを強く感じて不満な空間を「断熱」し、夏場の熱中症対策・冬場の低体温症対策も含めた省エネ・健康シェルターとして部分的にスマートウェルネス化しましょう、という「ひと部屋断熱」の考え方が医療・建築連携により誕生しました。
「ひと部屋断熱」は合理的で、ニッチなニーズにもフレキシブルに応えられる!
―編集部)文字通り「ひと部屋」だけでも断熱に配慮できれば、「わが家もスマートウェルネス住宅化した」と言えるわけですね。
あくまでも工事した部分だけのスマートウェルネス化になりますが「健康住宅」を意識した、断熱に配慮した省エネルギー空間を持つ住まいは、間接的な「スマートウェルネス住宅」もしくは「スマートウェルネスルーム」と言えるのではないでしょうか。
例えば私は、リフォームのご依頼を受ける際、特に高齢者がいらっしゃる空間では、寝室や一日のうち大半の時間を過ごす空間の断熱の重要性からまずお話します。やはりみなさんベッドを置く場所に窓際を選ばれますよね。朝日を浴びて起床したいと思うことは当然ですし、寝室で横になる時間が長い方には、窓からの景色がよく見える場所にベッドを置きたいとご家族は願います。そこで「この部屋だけでも断熱窓を採用しましょう、床の断熱もしましょう」とお話します。「ひと部屋断熱」のこの考え方こそが、みなさんに健康的に住まうことへの意識の向上を高めるはずです。
【床断熱工事+ 気密工事の様子】
部分的な断熱改修に新たな補助金制度も動き出した!
―編集部)「ひと部屋断熱」という提案は、施工業者である工務店の提案力にも関わると思うのですが?
そうですね。この概念の周知や、施工技術の向上、実例の共有は工務店でなされるべきです。そのために私はジェルコを通して健康と省エネについての知識と断熱施工技術者の育成について発信・活動しています。そして、国や地方自治体にもより住まい手のニーズに合った現場で使えるサポートをしてくれるよう働きかけています。部分的な断熱改修に対して、国と地域行政で改修工事費の最大8割・70万円補助される国土交通省が今年度から創設した補助金(※実施は自治体によって異なります。詳しくはお住まいの市町村へお問い合わせください。)や、既存の断熱改修の補助金なども利用しながら提案していければ、と考えています。
―編集部)
私たちも、リフォームの取材現場で「断熱」の功績を体感しています。具体的には、引渡し前で冷暖房がない状態でのお住まいの取材でも、涼しさ・暖かさを感じますし、なによりお引き渡し後のお施主様が「断熱を強化することで、温熱環境のストレスが減り光熱費にも多大なるよい影響があった」とおっしゃいます。
持続可能な住環境のためにさまざまな国の補助金もありますが、施主側も「ひと部屋断熱」という考え方を知り、施工業者である工務店もその技術を向上させるという両輪が大切だということがわかりました。