景観に溶け込む美しい佇まい、新旧の調和に心癒される住まい

大自然の中に佇む美しい隠れ家
ここはお施主様が普段暮らす大阪某所から、車でおよそ2時間の場所。春の桜並木が有名な芳野川流域にあって、深い緑に包まれた集落の一角だ。前々から「自然豊かな環境に、古民家の別荘を持てたら」と、関西圏で物件を探していたお施主様とお母様は、数年越しで理想にかなうこの古民家との出会いを果たした。そして「海外で暮らす姉の子どもたちにも、日本の原風景的なこの地域での暮らしを体験してもらいたくて…… 」と話すお施主様は、改修を終えたこの別荘に親子それぞれ週2日ほどのペースで通われているそう。またお姉様ご家族も、帰国するたびにここで過ごす時間を楽しまれているという。もともとの屋根が藁葺きであったことから、築100年以上は経っているであろうこちらの物件。その改修は、「古民家再生」の経験豊富な『輪和建設』が手掛けることに。同社のリノベーションといえば本来、耐震・断熱などの安全性や快適性を何より優先してプランニングする。しかし今回は、別荘として使用することやお施主様からの要望もあり、住宅としての性能面の改修に加えて、「古民家の趣を最大限に生かしたプラン」が組み立てられた。
「古き良き趣を残すこと」が前提となった、こちらの改修計画。それ故に間取りの変更は極力せず、建具などの再利用は積極的に行われた。加えて『輪和建設』が保管していた古建具も、建物の雰囲気になじむものが厳選の上で流用されている。一方で完全に新しくなったのは、無垢の杉板を張った床や耐震のために新設した漆喰塗りの壁など。さらに新しく入れた室内の建具は既存のものを模して製作され、建物外周の窓も温熱環境を向上させるべくほとんどが入れ替えられている。また、キッチンやトイレなどの水回りも一新。特に洗面・浴室は、「海外からの友人たちを迎えやすく」というお施主様の希望に応えた「ホテルライクな装い」となっている。大きな木製テーブルが印象的なダイニングには、造作のミニキッチンを用意。リビングには薪ストーブを設置し、造作の本棚があるワークスペースも整えられた。そして居間の囲炉裏は、「古民家ならではの存在」かつ「住まいのシンボル」として既存のまま生かされたもの。「古民家の趣を残し、海外的な要素も取り入れたい」という住まい手の想いは、余すことなくかなえられているようだ。
■写真:築100年を超える古民家を、都会の喧騒から離れて過ごす別荘としてリノベーション。広大な敷地の中でも高い位置に建つこちらは、縁側からも庭からも開けた景色を望むことができる。
物件情報
構造 | 木造伝統構法 |
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築年数 | 築100年以上 |
詳細情報
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玄関土間
広々とした玄関土間は、田舎建ての古民家らしさが強く現れた場所。以前からの趣がしっかりと残された。
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造作キッチン
ダイニングの一角に設置された造作ミニキッチンは、住まいの雰囲気に調和するようデザインされている。
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玄関ホール
こちらは玄関土間からつながるホール空間。杉皮を用いたトイレの引き戸や、下部が靴収納になった式台など、工夫と技術が詰まっている。
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プロ仕様のキッチン
ご家族それぞれが料理好きであることから、キッチンは居住スペースから独立させた。
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古民家らしさを生かす
集う人をより心地よくする、古民家らしい一体感のある空間。
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杉板張りの広々空間
もともとは畳敷きの和室だった部屋を、居間・ダイニングからつながる杉板張りのリビングに。一角には薪ストーブを設置し、ソファの背面にはコンパクトなワークデスクが収まる本棚を造作している。
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サニタリールーム
ホテルライクな装いに仕上げられたサニタリースペース。
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自然を感じる浴室
バスルーム。入浴しながら梅の木を眺められるのが、お施主様のこだわり。
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トイレは2箇所に
トイレは以前の間取りから配置を変更。大人数で集まることが多いので、2箇所に用意された。
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古民家らしさを生かす外観
雨戸と戸袋、窓格子も今回の改修で一新。古民家らしい趣を損ねないよう、それぞれが木製でつくられている。
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美しい自然を眺める
縁側の向こうには多種多様な樹木の枝葉が重なり合い、季節の移ろいを感じることができる。お施主様はこの景色に惹かれ、こちらの物件の購入を決めたそう。またお母様も、「初めて内覧に来たとき、満開の桜が圧巻でした」と振り返る。