素材の良さと技術の高さを現代の住まいとしてよみがえらせた、贅沢で価値の高い古民家再生

親子をつなぐ、奈良の古民家再生
「娘家族がいる奈良で暮らしたい」と考えていたお施主様ご夫婦が出会ったのは、築100年超えの家。調べてみると、構造躯体は金物を使わない木組で石場立ての「本当に昔ながらの伝統構法」による建築だった。それだけに、対応できる業者は限られてくる。同邸宅を『輪和建設』が手掛けることになったのは、必然だったのかもしれない。1階の改修プランは、その方向性が玄関ホールを挟んで分けられた。田の字に並ぶ和室は残しつつ、不要な階段を省き、新たな仕上げを施して美しい装いに。一方、反対側の空間全体は、キッチンに奥様お気に入りの設備を採用したり、個室に掘りごたつを設けたりと、大規模な改修を行っている。階段横の耐力壁は、空間同士を程よくつなぐ格子状。これは大工の力作で、ご夫婦も初めて見た時にはとても感動したそうだ。2階は小屋裏を現しにして、開放的かつ印象深い空間に。姿を見せた丸太の梁や桁は、太く長く、圧倒的な存在感を放っている。「配線類を見せたくない」というお施主様の希望にも、同社は丁寧かつ計画的な施工によってしっかり対応。もちろん段差も可能な限り無くし、断熱材の新設等による寒さ対策や、制震ダンパーでの地震対策も実施。同邸宅の古民家再生は、価値ある建築にさらなる価値を付加するものとなった。
物件情報
タイプ | 二階建て |
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構造 | 木造伝統構法 |
築年数 | 築100 年以上 |
詳細情報
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趣ある玄関
田の字に和室が並ぶ空間はそのままに、古民家らしい趣をしっかりと残した改修計画を実施。
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広々と開放的な書斎
こちらはご主人のお部屋。もともとあった勝手口や土間をなくし、広く開放的な空間にした。
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手刻みの階段
傷みのあった階段は一旦外し、新しい階段を設置。
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空間をつなぐ格子壁
階段の横にある壁を耐力性のある格子壁にすることで、空間同士に程よいつながりを創出した。
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掘りごたつのある空間
階段に面した個室には、掘りごたつを用意。お施主様は最初、囲炉裏を希望していたそうだが、安全性や使用頻度を検討した結果、掘りごたつに落ち着いたそう。ちなみにテーブルは、『輪和建設』からプレゼントされたもの。
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小粋なキッチン
古民家としての趣を大切に、現代的な機能性を追加。そして生まれた、小粋な空間。
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きわ立つ外観
建物が持つ「古民家ならではの趣」を大切にしつつ、外壁の板や瓦を新しいものに変更。建具も基本的には再利用したが、新たに網戸を追加している。また、室内の床材には節なしの杉を採用し、縁側には桧が使われた。
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美しい庭園
改修前は草木でうっそうとしていた庭も、きれいに整備。広く整然とした敷地に、門から玄関へと続くカーブを描いた三和土(たたき)のアプローチが映える。また、写真よりも手前には家庭菜園も作られている。
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数寄屋門
伝統的な工法で新たに建築された数寄屋門は貫禄ある姿で、同邸宅の顔としてふさわしい佇まいだ。
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可動式の格子戸
やや閉塞的で暗い印象だった台所は、テーブルも兼ねるキッチン設備と可動式の格子戸で小粋な空間に。
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古材の映える書斎
2階奥の個室はPCルームに変更。配線等が見えない工夫が施されている。
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生まれ変わった外観
外観も、瓦や壁板の張り替え、壁の塗り直しで見違えるほど美しくなった。
小林 紘子
こちらの邸宅は、古民家と呼ばれる建物の中でも、特に伝統的な技法によって建てられたものでした。構造材にも、とても立派な材木が使われています。そんな建物や構造の特性を検討した結果、邸宅では格子壁や制震ダンパー等による地震対策をご提案しました。また、外構やお庭のデザインにもとことんこだわった同邸宅の住まいづくりでしたが、本格的な数寄屋門を手掛ける機会を頂けたことは、私にとってとても良い経験になりました。