県外出身の私が考える、奈良で子育てするための土地探しポイント
2025/05/01
目次
〜住み心地ランキング2024と教育環境から考える〜
私は福岡県出身で、結婚後に夫の転勤に伴い大阪・金沢と住み、奈良市に越してきてまもなく10年を迎えます。奈良に引っ越した当初、カルチャーショックを受けたのは、「県庁所在地=大都市」という自分の常識が、奈良には該当しなかったことです。
JR奈良駅前は駅前とは思えないくらい穏やかで繁華街がほとんどなく、その周辺には鹿と触れ合える広大な奈良公園と古刹が点在し、観光客や、国宝級の寺院や彫刻、世界遺産にあふれている、どちらかというと“The観光地”という印象。一方で、いわゆる駅ビルのようなショッピング施設があり交通の要として利便性に優れているのは、近鉄奈良駅から2駅先の大和西大寺駅周辺。しかしそこも“都会”とは言えない——そんな私が、まる10年住んでみて感じたのは、奈良県は、歴史ある街並みと自然の豊かさを併せ持つ魅力あふれる素敵な地域で、「暮らしやすさ」という点では他のどんな都市にも負けない魅力がある、ということでした。
大阪にも京都にも交通の利便性が良く、また、子育て支援が充実しているため、住まいづくりに最適な場所として人気があります。この記事では、奈良県内の住宅地として人気の高い町や行政の補助制度についてさらに深掘りしていきます。
奈良県住み心地ランキング2024とその背景
2024年に発表された奈良県内の「いい部屋ネット住み心地ランキング2024」では、以下の地域がランクインしていました。
- 北葛城郡王寺町
- 北葛城郡広陵町
- 香芝市
- 生駒市
- 奈良市
これらの自治体はいずれも、他府県への交通アクセス・自然環境・生活インフラのバランスがよく、さらに教育環境と防災意識の高さも住み心地ランキングに大きく関与しているようです。
教育水準が支える「住み心地」の良さ
私自身、13歳の子どもがいて自宅近くの公立中学校に通わせているのですが、子育てを通して奈良の教育環境の良さを肌で感じています。駅によっては、飲食店よりも学習塾の数の方が多いのではないか!?と思う場所も。各自治体単位でも、学力向上と教育支援に力を入れており、実際にランキング上位の地域では次のような特徴があります。
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北葛城郡王寺町
義務教育学校(小中一貫)の導入による、9年間を通した計画的な学習支援。図書館や学習支援施設も整備されており、地域と連携した環境教育の取り組み。【支援制度】就学援助、ICT教育の導入、小・中学生対象の無料学習支援塾など。
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北葛城郡広陵町
少人数学級と担任以外のサポート教員を手厚く配置、きめ細やかな学習指導。地元企業との連携教育や体験型学習を重視。【支援制度】学用品費・修学旅行費などの就学援助、放課後子ども教室など。幼児教育・保育の無償化。
香芝市
市内には高評価の公立学校が多数。高校・大学進学率も奈良県内で高い水準を誇る。教育インフラのアップデート中につき新設校や校舎の改築が続々。【支援制度】特別支援教育の充実、早期教育支援(未就学児童対象プログラム)等。
生駒市
小中一貫教育モデルを導入し、国際理解教育や探究学習を重視。奈良県内有数の進学校が近隣にあり、受験対応の地域サポートも活発。【支援制度】英語教育プログラム、奨学金制度、家庭学習サポートアプリの導入。
奈良市
学力レベルが高く、全国模試で上位に入る市立中学もある。奈良高校や一条高校など進学実績に優れた国公私立の進学校が多数。【支援制度】子どもの貧困対策(スクールソーシャルワーカーの配置)、不登校児童生徒への学習支援など。
ハザードマップと土地選び:安心して暮らせる場所とは?
奈良は海がなく盆地という地形上、津波や高波の心配はないものの、一部地域では台風時の内水氾濫や土砂災害のリスクの懸念があり、土地探しの際にはハザードマップの確認が必須です。豪雨被害や土砂崩れなど、自然の脅威を感じるニュースが年々増えています。被害にあわれた方が「数十年ここに住んでいるが、こんなことは初めて」といった内容のことを話されていることも。安全に住める場所の見極めは難しいかもしれませんが、できること・わかることは調べて、納得してから土地を選ぶという過程が必要だと思います。また、各市町村では、特性に合わせた防災計画が進み、住民向けの防災訓練も定期的に実施されています。
・奈良県 総務部知事公室 各市町村のハザードマップ一覧
・奈良県「防災・危機管理」調査結果・ハザードマップ等
・国土交通省 ハザードマップポータルサイト
子育て支援制度も家づくりを後押し
子育て支援が充実している点も、奈良に住みたいと思った大きな理由の一つです。気軽に育児相談ができる子育て広場や無料で利用できる遊び場など、自治体ごとにさまざまな取り組みや支援があります。
- 医療費助成(18歳を迎えた3月31日まで)
※市町村により助成内容は異なります、子ども医療費助成事業の「市町村別一部負担金一覧」は、県のサイトに載っています。
奈良県 子ども医療費助成事業
- 出産祝金、乳児健診支援、保育料軽減
- 公立保育園・幼稚園の拡充と待機児童ゼロを目指した取り組み
- 各自治体独自の子育てポータルサイトを設け、引越し・転入時のサポート体制を強化。
奈良県への移住者の年齢層と傾向
2022年のデータによると、奈良市は年少人口(0〜14歳)の転入超過数が関西で1位、全国で12位となっており、奈良県への移住者は、主に30〜40代の子育て世帯が中心。特に奈良市では、教育環境や全公立園においておむつ定額サービスにより手ぶら登園を可能にする取り組みなど、子育て支援の充実が好評を得ています。移住を考える場合、各自治体の支援制度や生活環境を比較し参考にしながら、自身の生活様式に合ったエリアを選ぶことがとても重要です。
まとめ:おだやかで深い「暮らしの質」がここにある
奈良は確かに「都会」ではありません。一方で「安心して子育てができる環境」「地域がサポートする教育体制」「防災に対する意識の高さ」があります。華やかさはないけれど、穏やかな毎日と地に足がついた「住み心地」が手に入ります。
10年ここで暮らして、家づくりができて本当に良かったと思っています。
ライター:内藤 美由紀